東京慈恵会医科大学
葛飾医療センター院長
Crickets部長
吉田和彦 先生
Crickts発足 50年を祝して Crickets部長 吉田和彦(S55卒)
来年、東京慈恵会医科大学アメリカンフットボール部Cricketsは、発足50年を迎えることになりました。昨年は全勝優勝、perfect (undefeated) seasonを達成することができました。このような慶事が続くことは、現役の選手・マネージャー諸君、OB, OG,さらには監督、コーチ、ご父兄など、多くの関係者の努力と支援の賜と感謝申し上げます。
さて、私がアメフトにのめり込んだのは、S53年卒の秋山先生に教えていただいた「一人を生かすために、他の10人が犠牲になるスポーツは他にない」に象徴されるfinal sportしての魅力と、”Winning isn’t everything. It’s the only thing.”というLombardi哲学であったように思います。現役時代に組んだハドルでの同僚の顔は、忘れ得ない私の生涯の宝物になっていますし、Cricketsは私にとってのanother familyとも言えます。
医学部で怪我の危険があるハードなスポーツに取り組むことに関する議論はあると思います。しかし、高校を卒業後医学部へ入学し、「専門学校的な」医学部を出た先に期待されるのは、軍で言えば士官、leaderとしてteamを率いる資質です。このような資質は、クラブのような卒前のプチ社会で養うしか方法はありません。クラブにおける秩序、上下関係、仲間との信頼感などは、患者さんに最高のサービスを提供する組織の一員としての不可欠な能力を醸成してくれます。加えて。アメフトは各々のポジションの役割を最大限に生かすことが求められる戦略性の高いスポーツで、チーム医療のシミュレーションとしては最適です。多くのOG/OBが卒業後、大学の内外、あるいは米国などで活躍していることは、その証左と考えます。
今後も、CricketsとCrickets familyの益々の発展を祈念するとともに、私としても出来るだけの尽力をさせていただく所存です。
THE ROCKEFELLER UNIVERSITY
教授 辻守哉 先生
東京慈恵医科大学アメリカンフットボール部Cricketsの創部50周年おめでとうございます。去年の帰国時に卒後35年にして初めてCricketsの試合を観戦する機会を得、しかもその試合で優勝を決定出来た瞬間は大変感激しました。現役諸君、この場を借りて全勝優勝おめでとう!
さて自分の履歴で申し訳ありませんが、私は昭和58年に慈恵医大を卒業直後、東京大学医学部免疫学教室の大学院に入学し、当時全国から集まった超エリートの中で何とかサバイブして4年後に卒業しました。その後ニューヨーク大学医学部に海外留学し、現在はノーベル医学生理学賞受賞者を24人輩出しているロックフェラー大学のアーロン・ダイアモンド・エイズ研究所で教授をさせて頂いております。10年ほど前に強力な免疫誘導作用を持った糖脂質を発見し、今はその糖脂質の種々の癌に対する免疫治療、さらにワクチンに対するアジュバント効果を研究しています。今年中には卵巣癌患者に対してこの糖脂質の第1相臨床試験を施行する予定です。
振り返るとこれまで常に逆境の連続でしたが、Cricketsの不屈の精神と勝利魂で勝ち抜いて来ることが出来ました。学生時代は予科の時は陸上部との兼部、5年生の時はCricketsのキャプテンとして、6年生時は12月の最後の試合まで頑張った記憶があります。特に4年生の時の夏合宿最終日に当時の大石監督がセットアップされた日体大とのスクリメージでは皆ボロボロに疲れ果てた体にもかかわらず結構善戦した思い出は今でも脳裏に焼き付いています。自分が今まで驀進出来たのはこのようにCricketsの時に培われた強靭な精神力と体力(知力はともあれ・・笑)、そして自信によるものだと言っても過言ではありません。
新入生や現役の諸君、Cricketsでの経験は必ず君たちの将来の糧になります。誇りを持ってお互いに頑張りましょう。
最後に重ねてCricketsの創部50周年、誠におめでとうございます。
Faith, Courage, Humanity
東京慈恵会医科大学
産婦人科講座
主任教授 岡本愛光 先生
標題はジョー・ロスというカルフォルニア大学バークレー校の花形QBの言葉です。彼はピンポイントパサーとして勇名を馳せたスタープレイヤーでしたが、実は皮膚がんに侵されてました。しかしながら最後の最後まで希望を捨てずに明るく戦い抜き、1977年のジャパンボールで勇姿を見せてくれた後に世を去りました。私が高校2年生の時でしたがこの言葉は今でも私の座右の銘です。慈恵に入りアメフトに入り、多くの先輩や同僚に恵まれました。一生懸命に練習をして、チームメートと力を合わせ試合に勝利した喜びは今でも忘れません。合宿も結構きつかったですが、夜は皆と和気あいあい、本当に楽しかった!素晴らしい一生の思い出です。当時の部長でいらした藍澤茂雄名誉教授はワシントンレッドスキンズが大変お好きで、私の海外留学先がNIHで、皆ワシントンレッドスキンズファン!何か縁を感じました。私の人生を変えた国立がんセンター留学を推薦してくれた(当時はどちらかというと命令)寺島芳輝教授に10年ほど前に「なぜ私をがんセンターに推薦してくれたのですか?」と尋ねたら、「愛光はアメフトやってたから」という回答で、よく意味は分からなかったですが(?)、がんセンター時代がなければ今の私はなかったです。現在の部長を務めていらっしゃる吉田和彦教授は試合の時はいつも熱く、そして「慈恵はジェントルマンでなくていけない」といつも言われておりました。私はいつも慈恵人であることを誇りに思い、教授となってからも産婦人科医局員の先生に「慈恵は紳士・淑女の集まりです」と言っております。先輩で仲良くしていただいた辻守哉先生(NYのロックフェラー大学の教授)と5年ほど前に久しぶりにNYで再会し、それがきっかけとなり、産婦人科医局員が辻先生のラボに留学させていただいております。同級生で同じアメフトの二階堂先生(佼成病院副院長)とは学生時代からずっと親友で、今も定期的にとても楽しい食事会をしてます。私によくタックルしてきた聖マリアンナのY先生は現在父兄会で一緒で、とても楽しく仲良くやってます(笑)。家内と娘は慈恵アメフトの試合を楽しみにしております。アメフト部員の一所懸命なひた向きな姿はとても頼もしく、時間が許す限り家族で観に行くようにしております。といった感じで、私の人生はまさにアメフトにより作られたといっても過言ではありません。まさに表題の誠実、勇気、人間性をアメフトを通して学びました。ぜひ若い諸君、アメリカンフットボールクラブを通して、多くのことを学び、楽しく充実した学生生活、そして素晴らしい人生を送りましょう!
Brain and Spinal Injury Center
University of California, San Francisco(UCSF)
博士研究員
森岡和仁 先生
新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。そしてCricketsの創部50周年を心よりお 祝い申し上げます。 平成24年からカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)脳神経外科で中枢神経・筋 骨格系外傷の研究をしています森岡和仁です。平成12年に慈恵医大を卒後、東京大学医学 部附属病院整形外科へ入局し、平成17年に東京大学大学院へ入学、学位および整形外科専 門医を取得後にUCSFへ研究留学して現在に至ります。 学生時代は2年生までゴルフ部に所属して予科長を務めていましたが、アメリカンフット ボールというスポーツに興味を持っていたこと、アメフト部の同期と仲が良かったこと、 そして団体スポーツを経験できる人生最後の機会と考えて周囲の反対をよそに転部しまし た。 Cricketsではプレイ年数が短く怪我をしがちで大した選手にはなれませんでしたが、幹部 学年で経験できた川﨑球場での決勝戦は忘れられぬ想い出になっています。部活を通じて 固定観念から解放され新たな自己を発見できたとともに仲間との絆の深さを実感できた貴 重な機会となり、医師になった後もアウェイの地でサバイブするための自己研鑽の礎とな りました。 母校から離れて久しくなりますが異国にいても繋がりは続いており、Cricketsを通じて充 実した学生生活を送ることができたと改めて実感しています。現在もアメフト熱は冷めて おらず、サンフランシスコ・ベイエリアを本拠地とするNFLの49ersとNCAAのカリフォルニ ア大学バークレー校(CAL)へチーム愛を持って応援しています(49ersのスタジアムには 名前が刻印されたブロックがあります)。 学生生活は長いようで短く、自らの裁量で自由に動ける貴重な時間ですので、医学部へ入 学した初心を忘れず充実した日々を過ごしてください。 そして学生生活で忘れ得ぬ経験をしたい、先輩・同期・後輩との深い絆を築きたい、不屈 の精神を培いたい方にはCricketsへの入部をお勧めします。
チームに必要なこと
西広島リハビリテーション病院院長
岡本隆嗣 先生
私は大学の時に、アメリカンフットボールをやっていました。アメリカンフットボールは日本ではマイナーなスポーツで、みなさんほとんど知らないと思いますが、こんなふうに陣形を組みます(右図参照)。
一番前には、「ラインメン」と呼ばれる、前の相手をブロックして走る道を作る人がいます。「ランニングバック」は開けてもらった道を走る人。「ワイドレシーバー」が球を取る人。「クォーターバック」は、チームの司令塔で、ボールを投げても走ってもいい人です。ちなみに、私はラインメンをやっていました。 医療のチームを考えた時に、野球とかサッカーよりもアメフトのチームが一番似てるんじゃないかなと思います。ラグビーもサッカーも、ポジションは決まっていますが、まあ何をやってもいいというか、できることは大体一緒です。でもアメリカンフットボールはポジションごとにできることが決まっていて、クォーターバックという、作戦を考えて、投げるか走るか決めるリーダーがいて、それぞれの専門職がいて、練習もポジションごとに全然違います。走る人は走る仕事しかやらないし、取る人は取る仕事ばっかり。つまり、チームで言う分業をしています。1人ではできない仕事をやるために、2人3人とチームを組んでやる。その時に役割分担をして、さらにそれぞれの人間をまとめる、分業と協業の中にリーダーシップが必要なんです。こんな風に、非常に医療のチームに似ているな、と思います。 今の医療でチームに必要な要素をいろいろ考えた時に、毎年新人に話しているのが、この5つです。
1人1人が全然違う仕事をするから、「[2]専門性」が生まれて、深く技術を身に着けることができる。これはやっぱり必要な事なんだろうと思うんですよね。みんなが同じことをやっていたら、そんなに深く1つのことって掘れないと思います。そして、こういう専門職がお互いに「[3]情報共有」を行うために必要なのが、「[1]共通言語・共通知識」です。これがないと会話ができないんです。全員に共通して必要な基礎と言えます。アメリカンフットボールで言うと”ダッシュ”と”ブロック”にあたり、それぞれのポジションごとの練習の前後に、毎回必ず全員で練習していました。 朋和会では、すべての職種の共通言語となる略語を選定してまとめています。先日職員に「略語テスト」をやってもらったんですが、それはこの中の「[1]共通言語・共通知識」が、チームに必要な要素だからです。何のために略語テストをやったかというと、「あなたはチームにいる資格がありますか?」「ちゃんとチームに必要な要件を、あなたは満たしていますか?」という問いかけのためです。厳しいかもしれないけど、普段私達が使っている最低限の共通言語をテストしたわけですから、100点が当たり前。分からないっていうことは、普段病棟で飛び交っている言葉が理解できていないということですからね。そういうことを、ちゃんと上司が部下に伝えて教育しているかというのは大事なことで、すごく良いきっかけだったと思います。頑張った職員もたくさんいたっていうのは嬉しかったですし、いい結果が出なかった職員さんは次回リベンジして欲しいと思います。チームの力というのは全員の力の合計ではなく、全員に共通する基礎力の幅を言うのではないでしょうか。 また、コミュニケーションを取る上ですごく大事なのが、「[4]相互理解(お互いのことを知ること)」。これは、「お互いの仕事を知ること」と言ってもいいかもしれません。私もよく病棟の看護師さんに声をかけると、「後にしてください」って言われたりすることがあるんです。看護師さんに何かを伝える時、例えば薬を確認したりしている時に、自分が今言いたいからということで言っても、うまく伝わらないですよね。今この時間だったら空いているから、この時間にちょっとしゃべろうとか。相手の仕事をよく知っていないとできないことなんです。後は若い人とかベテランの人とか、相手によって話し方を変えるじゃないですか。相手のキャラクターも含めて相手のことをよく知っていないとできない、いわゆる配慮することができません。これはすごく大事なことだと思います。 そして、それを最後にまとめる「[5]リーダーシップ」。私はアメフト部でキャプテンをやっていたんですけど、チームに何が必要かといったときに、ルールや戦略などのアメフトの共通知識はもちろん必要だし、専門性も必要です。けれど、やっぱりリーダーが中心になって普段からコミュニケーションをしっかりとっていないと、チームってまとまらないんですよね。チームの方向性と目標を示し、それをまとめるリーダーシップが必要だというのは、私はアメリカンフットボールから学んだことなんです。
四国徳島の小児科医がみなさんにどうしても伝えたいこと
~アメフト部は一石四鳥で二毛作~
徳島赤十字病院
小児科副部長
七條光市 先生
徳島赤十字病院小児科副部長 七條光市(平成16年卒)
新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
私も約20年前に、期待と不安を胸に四国の徳島から上京しました。
みなさんはこれから「部活を決める」という大事な作業を行わなければなりません。
部活を選択するにあたり、私の教訓がみなさんのよりよい未来のために役立てば幸いです。
どうかお付き合いください。
教訓① ~「モテ度」は部活による影響大!~
「七條君って、高橋カツノリに似ているね~」と女子に高校時代に言われたことのある私(武勇伝)ですが、中学時代に比較すると高校での「モテ度」は奮いませんでした。自分で分析してみたところ、部活の影響が大きいという結論に達しました。中学までは野球部というバリバリ体育会系でしたが、高校は弓道部という体育会系と文化系の中間のようなものに所属していたのです。なので、大学では華やかな部活がよいと考え、アメリカンフットボール部にチャレンジしました。結果は・・・。嫁も子供もいる身なので、これ以上は語りません。みなさんのご想像におまかせしますね!
教訓② ~「楽(ラク)」を求めると、ラクだけど楽しくない~
「勝ち負けはどうでもいい。みんなで楽しくやれれば、それでいい。」これは高校までの私の部活に対する考えでした。なので、高校の弓道部もあまり真面目に練習せずに仲間とふざけたりしながらゆる~い感じでやっていました。高校最後の総体ではみんなの調子がよく、初日を終えて団体戦で2位という好位置につけることができました。「この調子なら四国大会、全国大会も夢じゃない」とみんなで喜びましたが、翌日はみんなが大崩れで結局予選敗退となりました。この時、「もっとしっかり練習していれば・・・」と真剣に練習してこなかったことをとても後悔しました。努力していなかったので、泣くことさえできず、悶々とした気持ちだけが残りました。そして、もし大学で部活をやるときは本気で頑張れるものを選ぼうと心に誓いました。
教訓③ ~「勝つ」ということ~
「勝つ、絶対に勝つ!」東京慈恵会医科大学アメリカンフットボール部に入ってこの言葉を何度も耳にしました。そしていつしか自分も試合中に、そう何度も叫ぶようになりました。「勝つ」ためには己の努力が必要です。そして「絶対に勝つ」ためにはみんなが力を合わせて一つになる必要があります。勝利を目指して本気で努力することでこそ、真の友情が芽生え、心から喜んだり、思いっきり泣いたりすることができます。そして、「みんなが一つになった」と感じることができたときに、「勝ち負けはどうでもいい、私はもっと大切なものを手に入れることができた」という実感を得ることができました。私の高校時代の経験は無駄になりませんでした。
教訓④ ~医者で必要なのは「気力・体力・人間力」~
私は現在、地元徳島の小児救急拠点病院で勤務を続けています。徳島のすべての小児救急患者に24時間365日対応するために、様々な人と協力しながら自分の役割を果たしています。みなさんが、今後どこでどのような医師になっても、働くうえで「気力・体力・人間力」が必ず必要です。そしてこれら3つの能力はアメフト部に所属することで、より向上させることが可能です。
医者に必要な「気力・体力・人間力」が鍛えられ、「モテ度」もアップする。アメリカンフットボール部は一石四鳥で二毛作(人生の収穫が二倍)、間違いなくオススメです。もしタイムマシンがあって、もう一度入学当時に戻ることができるなら・・・、私は再び東京慈恵会医科大学アメリカンフットボール部クリケッツの門を叩きます。
白井祥睦 先生
平成22年卒業
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。アメフト部OBで医師8年目の白井祥睦です。現在は外科医としてのトレーニングの傍ら、基礎研究も行っています。私は医師になってからの方が「アメフト部に入っていて良かった!」と思うことが多いです。アメフトは高度な頭脳・チームプレイを要求されるスポーツで、そこで育った先輩たちは医師になってからもとても活躍しています。「アメフト部だった奴は使えるだろう」は、慈恵病院の中で共通の認識になっていると思います。そんな間接的な恩恵に加え、医療・研究の両面でアメフトの先輩に今でもお世話になっています。チームそして先輩・後輩の繋がりが強いアメフトファミリーに是非入って、学生生活、そして今後の医師人生を楽しんでください。